神さまめぐりの旅 箱根・九頭龍神社篇 その3

神の国に手が届きそう


箱根三社参りの最終地点は、箱根元宮(もとつみや)です。
駒ヶ岳山頂にあり、箱根大神が祀られている神社です。

箱根大神とは、ニニギノミコト、コノハナサクヤヒメ、ヒコホホデミノミコトの総称。
高天原に座す天照大神の神勅を奉じて、日向の高千穂峯に降り立ったニニギノミコトは、
地神クニツカミオオヤマスミノカミの娘にあたる、コノハナサクヤヒメと結婚し、
ヒコホホデミノミコトが誕生したことから、以来、
この三神を御祭神として箱根大神と崇め奉っているのだとか。

駒ヶ岳は古代、山岳信仰がおこなわれており、その起源はおよそ2400年前にも遡り、
やがて仏教が伝来し、神仏習合で修験者が錬行苦行する霊場として有名になったそう。


...そんな駒ヶ岳山頂に鎮座する箱根元宮へは、
駒ヶ岳ロープウェーに乗って行かなければいけません。
駒ヶ岳ロープウェーは、九頭龍神社の参道入口でもある箱根園より出ているので
九頭龍神社本宮の参拝をすませると、ふたたび、箱根園へと戻りました。

けっこうコワイ　/　すれちがうロープウェー　/　駅舎


古い駅舎で往復切符を買うと、間もなく出発の時刻となりました。
別荘地の上を通り、広葉樹林と針葉樹林のまざりあう風景の上を通り過ぎると
しだいに、眼下は高原らしい、なだらかな地面となります。
山頂が近づくにしたがって、緊張感が増してきました。

ただならぬ雰囲気


車内のアナウンスでは、駒ヶ岳山頂は現在、マイナス4℃とのこと。
他人事のように聞いていたのですが、到着し、ひとたび外に出てみると、
空気がまるで違っていました。
さすがに山頂、冷たい風が容赦なく吹きつけて、頬も耳も、感覚がなくなりそうなほど。
はるか遠く、頂上を見上げると、小さく朱のお社が見えました。
もう、寒さも忘れて、はやく辿り着きたい一心で山の階段をのぼっていきました。



階段をのぼるあいだも、風が強く吹きつけ、前に進むのが大変です。
グレーの雲の合間から、時折青い空がちらりと垣間見え、荘厳な光景です。
龍神さまがいる、...そう確信できるような場所です。

箱根元宮拝殿


やがて、くっきりと拝殿の姿が見えてきました。山頂です。
扉は閉まっていますが、ものすごく特別な場所だということが、
ひしひしと伝わってくるようです。
かじかんで感覚のない手をあわせて、丁寧にお参りをしました。



拝殿の裏に、こんな祠を発見しました。
写真(上右)の、注連縄のはってある岩は「馬降石」とよばれ、
白馬に乗って、神さまが降臨された岩とされています。
岩表面に、いくつもの小さなくぼみがあり、それは馬の蹄跡とも伝えられています。

山頂からの大パノラマ


寒さが厳しく、長くは居られませんでしたが、
存分にパワースポットの空気を吸い込むと、箱根元宮をあとにしました。
山頂から見下ろす景色は、また絶景。
眼下に広大なパノラマが展開するさまは、実に、言葉も出ません。
流れるような雲が、まるで龍のように見えてくるのは、私だけでしょうか。

箱根神社、九頭龍神社、そして箱根元宮。
無事に、三社参りをすませることができました。
山道を延々歩いたり、ロープウェーで山頂までのぼったり...と、
決して平坦な参詣ではありませんが、だからこそ、霊験あらたかなパワースポットとされ
崇められているのかもしれません。
私も、早く「ご利益がありました」とのご報告ができるといいなぁ...と願っています。

...そういえば、余談ですが。
ロープウェーに乗る際に、荷物が重たかったので、コインロッカーに預けていたのです。
そして、参拝を終え、暫し下りのロープウェーを待っているあいだ、
うっかり、ロッカーのキーを落としてしまったらしいのです。
しかし当の本人は、そんなこと気がつきもせず、のんきに待ち合いの椅子に座っていると
途中の山道でキーを拾った...とのことで、わざわざ私のもとへ届けてくれた方がいて、
もしこのキーがなかったら...と思ったら、ぞっとしたと同時に、
感謝の気持ちでいっぱいになったという出来事がありました。

また、箱根からの帰り道、すべての交通手段がうそのようにスムーズで
どのバスも電車も、まるで自分たちのことを待っていてくれたかのように接続し
あっというまに自宅に到着してしまいました。

些細なことといえば、些細なことで、驚くほどのことではないのかもしれませんが
そういう出来事ひとつひとつに、ありがとうの気持ちがわきおこるようでした。
神さまが守ってくれたのかな、と思うだけで、幸せに思えます。
今回の神さまめぐりの旅。充実感でいっぱいの、いい旅でした。
旧正月、あらためて、よい年でありますように...!